楽天は2月7日、公正取引委員会が楽天の「共通の送料無料ライン施策」に関して独占禁止法の疑いで調査を開始したことを楽天が発表しました。
楽天はECモール「楽天市場」において、沖縄や離島などの一部地域、一部商品を除き購入金額が3980円(税込)以上の場合、送料無料にする施策を進めています。
この一連の動きに対して、一部の出店者からは反発も出ているにもかかわらず、 三木谷社長は「何が何でも成功させたい」とコメントしており、今年の3月18日には送料無料化を開始する予定だとしています。
ではこのような逆風が吹くなか、楽天が送料無料化を推し進めたいのはどうしてなのでしょうか。
なぜ独占禁止法にあたるのか
楽天が「送料無料化」を実現したら、僕たち消費者にとっては非常にお得に感じますよね。
しかしながら、そう簡単に送料を無料化できないのが今回の問題。
ではそもそも何が独占禁止法にあたるのでしょうか。
読売新聞オンライン(Yahooニュース)によると、次の通りの記事が出されています。
楽天は昨年8月、これまで出店者が各自で設定するとしていた送料に関する規約を変更し、1店舗で3980円以上を購入した場合、出店者側の負担で一律無料にすると発表。同12月、各出店者に今年3月18日から無料化を始めると通知した。
(中略)
独禁法は、自己の取引上の地位が優位にあることを利用し、取引先に不当な不利益を与える「優越的地位の乱用」を不公正な取引方法の一つとして禁じている。送料無料化はまだ始まっていないが、公取委は、楽天が一方的に規約を変更して送料無料化を決めたことが、優越的地位の乱用にあたる可能性があるとみて調べる。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200210-00050061-yom-soci
つまり、今までは出店者側が設定していた送料は、商品を購入する消費者が払っていたため、 その分が利益の一部になっていましたが、3月18日からは消費者が送料を払わない代わりに、出店者側が送料分を負担しなければならないのです。
このことを楽天側が、出店者側の十分な同意を得られていないのにも関わらず、一方的に送料無料化を進めようとしているため、問題になっているのです。
楽天は売り上げや顧客満足度の向上につながると主張していますが、
出店者側の利益につながるかどうかは別問題です。
会計上、営業利益とは、売上高から売上原価を引いた売上総利益から、販売費および管理費などの費用を差し引いたものであり、当期純利益の場合にはさらにそこから税金(法人税、住民税、事業税など)等を差し引かなければなりません。
物流業界の人手不足などで配送料のコスト増大している中で、送料無料化は出店者側にとって大変大きな問題なのです。
送料無料化を進めたい背景とは~消費者の存在~
では、なぜ今になって楽天は送料無料化を進めたいのでしょうか。
その背景にあるのは楽天市場を利用する顧客の利便性の向上にあります。
現状では、楽天市場で商品を販売する出店者が自由に送料を設定しています。
そのため、全国送料無料の店舗や、配達地域や荷物の個数によって送料を変更している店舗、期間限定で送料無料のキャンペーンを実施している店舗など、出店者側が様々な送料条件を設定しているのです。
「この商品は送料無料なのに、この商品は送料が880円もかかる!」
と、今までに楽天市場を利用したことのある方は、このように感じたことがあるのではないでしょうか?
例えば、楽天市場の商品検索画面では、商品の「安い順」で検索することが出来ますが、
送料が別になっている商品の場合は、最も安い商品だと思っても、送料分を加えたときに他の商品よりも高くなってしまうケースがあるのです。
この分かりづらい仕組みが、楽天市場からの客離れの一因にもなっているようです。
そこで楽天としては、
楽天市場において 1つの店舗で合計税込3980円以上の商品を購入した場合、送料が無料になるという仕組み(沖縄県や離島など一部の地域や、大型、冷凍、冷蔵商品、酒類などを除く)を導入することにより、
顧客の利便性・満足度につなげたいのです。
送料無料化を進めたい背景とは~競合企業の存在~
楽天が送料無料化を推し進めたいもう一つの理由がライバルであるAmazonの存在です。
Amazonの通販サイトAmazon.co.jpの場合、Amazon.co.jpから発送される商品は税込みで2000円以上であれば送料無料、有料のAmazonプライム会員であれば購入額に関係なく送料無料となっています。
このことは楽天と比べると、僕ら消費者にとっては非常にわかりやすいですよね。
だからこそ、楽天としては世界的に人気のあるAmazonのように、消費者に分かりやすいような送料の仕組みを作りたいのです。
ではなぜ、Amazonでは送料が無料になっているのに、楽天の場合は送料無料化をなかなか実現できず、こんなにも大きな問題になってしまっているのでしょうか。
この原因はAmazon.co.jpと楽天市場のビジネスモデルに違いがあるからです。
なぜ楽天が実現できてない送料無料化をAmazonはできるのか
楽天のライバルであるAmazonは、送料無料化がされています。
では楽天が送料無料化をなかなか実現できない理由、これを両社のビジネスモデルを比較して解説します。
まず、Amazonが運営するAmazon.co.jpは企業が商品を出品するマーケットプレイス型のECサイトであると言われています。
一方楽天が運営する楽天市場は企業がお店を出店する、モール型のECサイトとなっています。
つまりAmazonの場合は、たくさんの商品をAmazon自身が在庫管理しているため、商品を販売することで利益を得ています。
一方で、楽天の場合は、楽天が商品を販売したり、在庫管理しているわけではありません。
楽天は楽天市場という商品を販売する「場所」を提供しているのです。
つまり、楽天は商品を販売したいという企業(出店者)に楽天市場という取引市場で商品を売買する権利を与える代わりに、出店者に出店料を払ってもらうことで利益を得ているのです。
楽天はAmazonと違い、出店者側がそれぞれの店のルールに基づいて運営しています。
そのため、出店者側としては自由度があることが楽天市場で商品を販売することのメリットであると考えていますが、
楽天側としては逆に自由度があることで、全体的に統一感のないサービスになってしまっている点をデメリットと捉え、このことを顧客満足度の低下に影響を及ぼしていると考えているのです。
したがって、楽天は統一感のあるサービスにするためにも送料を無料にしたいが、自社で商品の在庫管理・販売をしているわけではないので、実現のためには、出店者側の同意を得なければならない。
これが楽天が送料無料化を実現できない理由となっています。
そのため、今回独占禁止法にあたるのではないかという疑惑は、この出店者側の同意を十分に得ていないのにもかかわらず、強引に送料を統一しようとしているのではないかということが問題になっているのです。
まとめ
今では、たくさんの人が通販サイトを利用して商品を購入しています。
そのため、楽天の送料無料化の取り組みは、消費者にとっては大変うれしいですが、問題が解決されてないまま送料無料化を推し進めると、今後楽天の企業イメージの低下にもつながりかねません。
まずはきちんと出店者側に対しての説明責任を果たし、合意を得てから魅力的なサービスを展開していくことを期待します。
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